「歌えよ踊れ、分数ヴァイオリン」(25)−ほこり多きおけいこニスト誕生のために
楽譜通りに正確に弾けた子が、パフォーマンス一杯の子よりも評価されないのはどうしたわけ?
そこまで書いて、「楽譜通り」の前に「音程も正確で」と入れてみた。
実際には、整子の演奏は音程に問題があった。
そして、「パフォーマンス一杯」の前には、「ほとんど効いてもいない真似っこヴィブラートを必死にかけている」と入れてみた。
実際には、その年齢で、あのヴィブラートなら「よく効いている」と言うべきレヴェルだ。
結果で負けたことが、批評の眼を曇らせる。その上に、ここは、アンダーグラウンドの黙契に安んじて、どんな事でも書き連ねることができる場所だ。
自分は安全地帯に、自分の子供のことは棚に置く。時に立派な神棚に置くこともある。
そして、アイデンティティを隠匿して、出る杭をひたすら打ち続ける。
そのうち、あることに気づく。
神棚の我が子に、ある物が溜まってくるのだ。
「埃」である。
「誇り」を守るつもりが、「埃」にまみれてくるのだ。
口で「どうだ!」ではなく、演奏で「どうだ!」と行ければいい。それはよくわかっている。しかし、練習は辛く、志は時に挫け、他人の事はいつだって気になる。「潜ら叩き」で気を紛らしたくなるのだ。
そのようにして外見繕郎もまた、成算なき「我が子ほこり化」プロジェクトに足を踏み入れていくのであった。
【アホリズム】(25)
★「この子は私のほこりです」とチャネル通は言った。
そこまで書いて、「楽譜通り」の前に「音程も正確で」と入れてみた。
実際には、整子の演奏は音程に問題があった。
そして、「パフォーマンス一杯」の前には、「ほとんど効いてもいない真似っこヴィブラートを必死にかけている」と入れてみた。
実際には、その年齢で、あのヴィブラートなら「よく効いている」と言うべきレヴェルだ。
結果で負けたことが、批評の眼を曇らせる。その上に、ここは、アンダーグラウンドの黙契に安んじて、どんな事でも書き連ねることができる場所だ。
自分は安全地帯に、自分の子供のことは棚に置く。時に立派な神棚に置くこともある。
そして、アイデンティティを隠匿して、出る杭をひたすら打ち続ける。
そのうち、あることに気づく。
神棚の我が子に、ある物が溜まってくるのだ。
「埃」である。
「誇り」を守るつもりが、「埃」にまみれてくるのだ。
口で「どうだ!」ではなく、演奏で「どうだ!」と行ければいい。それはよくわかっている。しかし、練習は辛く、志は時に挫け、他人の事はいつだって気になる。「潜ら叩き」で気を紛らしたくなるのだ。
そのようにして外見繕郎もまた、成算なき「我が子ほこり化」プロジェクトに足を踏み入れていくのであった。
【アホリズム】(25)
★「この子は私のほこりです」とチャネル通は言った。
- [2007/06/01 22:40]
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「歌えよ踊れ、分数ヴァイオリン」(24)−初投稿
「誰がためのヴァイオリンコンクール」に初出場した外見整子は、ザイツ:協奏曲第5番3楽章をそれなりに演奏した。悪い出来ではなかった。ジー&バーの援軍が足を引っ張ることはなく、演奏に集中していた。
しかし結果はダメだった。
「(鐘が鳴る鳴る)キン(コンカン)賞」は夢のまた夢。ギン賞やドウ賞にも引っかからず、結局、「よくがんばりました」賞だった。要するに残念賞。
「細かいミスがあった。」
「音程もやや問題あったわ。」
「きちんと発音できてないところもあったかもしれない。」
「テンポもちょっと。」
「いろいろ傷はあった。それは、わかっている。だけど、せめてドウ賞には引っかかるだろうと思っていた。」
「キン賞もらった子には、まあ、負けたって感じだけど。それ以下は、そんなに違いがなかったわね。」
「あのギン賞獲った子なんて、整子とそんなに変わらなかった。」
「ああ、あれ。派手な弾き方。パフォーマンス重視かしら?」
「とにかく納得できない。」
悔しさが硬い大きな塊となって、胸を塞ぐ。わだかまりが大動脈を突き破らんばかりにドクドクと奔流となって流れ出す。今にも爆発しそうなこの気持ち。
ネット上の匿名掲示板では、そのコンクールのことがすでに話題にのぼっていた。
−オレも書きたい。
外見繕郎は強くそう思った。議論を読んでいるだけでは我慢ならない。オレも参加して、書きたい。この胸のつっかえを少しでも解消したい。
−よし、書くぞ。
毎日、習慣のように訪れ、読むだけだった匿名掲示板に初めて書き込みをする。
しかし、この微かに感じる後ろめたさは一体何だろうか? もちろんそれは、繕郎の胸を塞ぐ異物感に比べたら、ちっぽけな感覚に過ぎなかったが。
【アホリズム】(24)
★板見て虚し、痛みで苦し
しかし結果はダメだった。
「(鐘が鳴る鳴る)キン(コンカン)賞」は夢のまた夢。ギン賞やドウ賞にも引っかからず、結局、「よくがんばりました」賞だった。要するに残念賞。
「細かいミスがあった。」
「音程もやや問題あったわ。」
「きちんと発音できてないところもあったかもしれない。」
「テンポもちょっと。」
「いろいろ傷はあった。それは、わかっている。だけど、せめてドウ賞には引っかかるだろうと思っていた。」
「キン賞もらった子には、まあ、負けたって感じだけど。それ以下は、そんなに違いがなかったわね。」
「あのギン賞獲った子なんて、整子とそんなに変わらなかった。」
「ああ、あれ。派手な弾き方。パフォーマンス重視かしら?」
「とにかく納得できない。」
悔しさが硬い大きな塊となって、胸を塞ぐ。わだかまりが大動脈を突き破らんばかりにドクドクと奔流となって流れ出す。今にも爆発しそうなこの気持ち。
ネット上の匿名掲示板では、そのコンクールのことがすでに話題にのぼっていた。
−オレも書きたい。
外見繕郎は強くそう思った。議論を読んでいるだけでは我慢ならない。オレも参加して、書きたい。この胸のつっかえを少しでも解消したい。
−よし、書くぞ。
毎日、習慣のように訪れ、読むだけだった匿名掲示板に初めて書き込みをする。
しかし、この微かに感じる後ろめたさは一体何だろうか? もちろんそれは、繕郎の胸を塞ぐ異物感に比べたら、ちっぽけな感覚に過ぎなかったが。
【アホリズム】(24)
★板見て虚し、痛みで苦し
- [2007/05/29 19:36]
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「歌えよ踊れ、分数ヴァイオリン」(23)−親知らずが、みせび痛む日
とうとう、ジーとバーがコンクールに来た。
あれほど「来るな」と釘を刺したのだが、来てしまった。
1週間前、バーから電話があった。
親知らずが痛む朝で、嫌な予感がしていた。
「整子が出るんやろ、コンクールに。」
「出るけど。」
「刈谷なら行ける。ジーちゃんと見に行こみゃあ言うとるがね。箔太郎も連れてきたって。」
「見に行くって、あのねえ、お母さん。発表会とは違うのよ。」
「バレエでもピアノでも、ここらはジーちゃんとバーちゃん、みんな行かっせるで。」
「だから発表会じゃないから。コンクール。コンクールには普通、行かんでしょ。」
「孫がなんぞやるなら、みんな行かっせる、行かっせる。」
「はあ?」
「こないだも、近所の甚助さんとこ、一家で運動会に行かした。」
「ちょっと、お母さん。みっともないから、来んといたってね。」
「よー、そんな気ィ悪いこと言うがね、あんた。」
「でも、コンクールだから。だめよ。」
「なんや、分っかれせんことばっか言うとるで、あんた。どえりゃあ、ごが沸くわ。」
「絶対、来ないでよ! 来たら、承知しないわよ。」
「あんたみたい関係ない。整子と箔太郎の顔だけ見に行くがね。」
このように。
親は、痛い。
いつだって、痛い。
そして、コンクールの日。
(多分、来るだろうなあ。そして、あれを持ってくる・・・)
外見飾里の予感は的中した。
出番前、ホールのロビーでジーとバーに会った。
やはり・・・
花束を持ってきていた。
そして、ジーが舞台上の整子に花束を渡すと言ってきかない。
「孫が一生懸命弾いて、ジーちゃんがご褒美あげて何が悪い?」の一点張り。
外見飾里は無理やり花束をもぎ取る。
「何やりゃあすか、高い花束を。蘭を一杯入れてもらったのに。ジーちゃんが選んだがね。」
「ら、蘭? 子供にあげるのに、蘭?」
(スナックの開店祝いか。)
「ああ、気ィ悪いママだがねえ。ごめんな、整子ちゃん、堪忍したってちょ。」
バーも当然のごとく加勢。
「こんな親でも、ええ子が育つがね。ねえ、整子ちゃん、箔ちゃん。」
「じいじ、ばあば、じいじ、ばあば」
と言うそばから、怪獣箔太郎はすでにジーとバーと手をつないで、全体重をかけるブーランコ状態。
「さあ、箔ちゃん、何食べる? アイスクリーム? 始まるまで、ちょっと外に行っとるでよ。」
「うわー、あいちゅくむ、あいちゅくむ!」
初めてのコンクール挑戦なのに、このザマ。
痛いジーとバーの、整子の演奏に対する悪影響が懸念される展開となってまった。
【アホリズム】(23)
★痛い親、痒い子
(関連する過去の記事)
○やや不自然な「名古屋弁」と名古屋風「どえりゃあ」ギャグに触れてみる。
→「コーチのお城」−「みゃあコン」の話も出てくるでよ。
○ジーとバーも一緒に、みんなで楽しいお正月。
→「思い当たるフシアワセ」(13)−発表会はお正月!
あれほど「来るな」と釘を刺したのだが、来てしまった。
1週間前、バーから電話があった。
親知らずが痛む朝で、嫌な予感がしていた。
「整子が出るんやろ、コンクールに。」
「出るけど。」
「刈谷なら行ける。ジーちゃんと見に行こみゃあ言うとるがね。箔太郎も連れてきたって。」
「見に行くって、あのねえ、お母さん。発表会とは違うのよ。」
「バレエでもピアノでも、ここらはジーちゃんとバーちゃん、みんな行かっせるで。」
「だから発表会じゃないから。コンクール。コンクールには普通、行かんでしょ。」
「孫がなんぞやるなら、みんな行かっせる、行かっせる。」
「はあ?」
「こないだも、近所の甚助さんとこ、一家で運動会に行かした。」
「ちょっと、お母さん。みっともないから、来んといたってね。」
「よー、そんな気ィ悪いこと言うがね、あんた。」
「でも、コンクールだから。だめよ。」
「なんや、分っかれせんことばっか言うとるで、あんた。どえりゃあ、ごが沸くわ。」
「絶対、来ないでよ! 来たら、承知しないわよ。」
「あんたみたい関係ない。整子と箔太郎の顔だけ見に行くがね。」
このように。
親は、痛い。
いつだって、痛い。
そして、コンクールの日。
(多分、来るだろうなあ。そして、あれを持ってくる・・・)
外見飾里の予感は的中した。
出番前、ホールのロビーでジーとバーに会った。
やはり・・・
花束を持ってきていた。
そして、ジーが舞台上の整子に花束を渡すと言ってきかない。
「孫が一生懸命弾いて、ジーちゃんがご褒美あげて何が悪い?」の一点張り。
外見飾里は無理やり花束をもぎ取る。
「何やりゃあすか、高い花束を。蘭を一杯入れてもらったのに。ジーちゃんが選んだがね。」
「ら、蘭? 子供にあげるのに、蘭?」
(スナックの開店祝いか。)
「ああ、気ィ悪いママだがねえ。ごめんな、整子ちゃん、堪忍したってちょ。」
バーも当然のごとく加勢。
「こんな親でも、ええ子が育つがね。ねえ、整子ちゃん、箔ちゃん。」
「じいじ、ばあば、じいじ、ばあば」
と言うそばから、怪獣箔太郎はすでにジーとバーと手をつないで、全体重をかけるブーランコ状態。
「さあ、箔ちゃん、何食べる? アイスクリーム? 始まるまで、ちょっと外に行っとるでよ。」
「うわー、あいちゅくむ、あいちゅくむ!」
初めてのコンクール挑戦なのに、このザマ。
痛いジーとバーの、整子の演奏に対する悪影響が懸念される展開となってまった。
【アホリズム】(23)
★痛い親、痒い子
(関連する過去の記事)
○やや不自然な「名古屋弁」と名古屋風「どえりゃあ」ギャグに触れてみる。
→「コーチのお城」−「みゃあコン」の話も出てくるでよ。
○ジーとバーも一緒に、みんなで楽しいお正月。
→「思い当たるフシアワセ」(13)−発表会はお正月!
- [2007/05/17 20:15]
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「歌えよ踊れ、分数ヴァイオリン」(22)−コンクーラーへの道
「同じ小1なのに、ヴァイオリン歴にそれほど差はないはずなのに、天地以上の開きがある。うちは今まで一体、何をやってきたのだろうか?」
大木奏江のスペイン交響曲の衝撃は、暫く外見家の両親の胸中から消え去ることはなかった。
大木奏江は結局、チェリストの父の知り合いであるロシアのツヴェターエヴァ教授のレッスンを常時受けるために、母と共にロシアに渡ったとの噂で、以来2度とこの門下の発表会に姿を見せることはなかった。
短期間でも身近にそういう突出して優秀な存在がいた時、それを励みにするのか、なかったこととしてやり過ごすのか。優劣を競うヴァイオリン道。だからこそ素直さと謙虚さが大いに必要となる時もある。
外見一家は、大木奏江を励みにした。
小学校2年生になった。
そろそろコンクール出場を考える時期がやって来たようだ。
「『誰がためのヴァイオリンコンクール』、『日本クラクラシカカル音楽コンクール』、『かなわないか音楽コンクール』は一度、下見に行くぞ。」
「『誰がための』は京都よ。」
「愛知県でもやっているらしい。」
「弦田さんと遠野さんは、『クラコン』に出るらしいわよ。」
「今年の『マイコン』は予選・本選・全国大会、全部見に行くぞ。」
「全国大会は去年もそうだったけど、チケット入手が難しくなりそうよ。」
「おう、そう聞くと萌えてくるな。いや、燃えてくるな。『クラコン』も予選・本選・全国大会、全部見に行くぞ。」
「平日の場合もあるわよ。」
「会社は休むに決まっているだろう。システム部の林と、事業戦略部の青木は、『ピティナ旦那』。一方ヴァイオリンでは、『パパアッチ』はオレぐらいのものだ。あとは、『発表会、しょうがないから、行きますが』という低モチヴェーションのダメパパばかり。だからうちの会社はダメなんだ。」
「それ、関係ないと思うけど。」
「いや、関係ある。家族への貢献度≒会社への貢献度。」
「アッ、これだ! これやこの『あふさかの関国際音楽コンクール』のサイト、見て見て。」
「どれどれ。なるほど、関西ではセミ丸急上昇中と話題のコンクール。全国型になってきたな。よし、知るも知らぬも『あふさかの関国際音コン』インファント部門エントリー決定!」
「『天才弦掻くコンクール』というのもあるわよ。関西では『マイコン』の模擬テスト的位置づけ。」
「おお、浪花のド根性による真夏の戦い、か。それも見に行くぞ。」
「『がまん比べしょっちゅう乞う音楽コンクール』なんていうのもあるわよ。」
「遠方に出かけて、弾く機会が増えてくるわけだな。」
「となると、いかにも舞台で着ますよ的ドレスだけじゃなく、おうちから着ていってそのまま舞台に出ても不自然じゃないドレスも買わなきゃねえ。いっそ、弓元ピーコにお見立て願おうかしら。」
「コンクールのため宿泊もしなければならないだろう。」
「この際だから、旅行バッグを軽量のものに買い替えたいわ。」
「ビデオカメラもコンパクトな軽いやつが必要だろう。」
「私の服も欲しいわ。発表会用とは別に、コンクール用のが。」
「オレもそろそろ一張羅がよれてきた。ポール君に替わる、次世代型勝負スーツが欲しいぞ。ドルガバかアルマーニか。」
「私、ヴァイオリンケースが欲しい。『のだめ』の峰君が持っていたような、赤くてカワイイのがいい。」
「ぱくちゃん、とみか、ぷられーる、ほちい。くれーんしゃと、だんぷと、ぱとかーと、ちんかんちぇんと・・・」
・・・
「欲しい」「買いたい」「欲しい」「買いたい」・・・
家族全員で際限なく繰り広げられる、「購入物」論議。
欲望の連鎖反応、おねだりのドミノ現象。
【アホリズム】(22)
★コンクーラーへの道。やはり先陣を切るのは「福沢諭吉」であった。
大木奏江のスペイン交響曲の衝撃は、暫く外見家の両親の胸中から消え去ることはなかった。
大木奏江は結局、チェリストの父の知り合いであるロシアのツヴェターエヴァ教授のレッスンを常時受けるために、母と共にロシアに渡ったとの噂で、以来2度とこの門下の発表会に姿を見せることはなかった。
短期間でも身近にそういう突出して優秀な存在がいた時、それを励みにするのか、なかったこととしてやり過ごすのか。優劣を競うヴァイオリン道。だからこそ素直さと謙虚さが大いに必要となる時もある。
外見一家は、大木奏江を励みにした。
小学校2年生になった。
そろそろコンクール出場を考える時期がやって来たようだ。
「『誰がためのヴァイオリンコンクール』、『日本クラクラシカカル音楽コンクール』、『かなわないか音楽コンクール』は一度、下見に行くぞ。」
「『誰がための』は京都よ。」
「愛知県でもやっているらしい。」
「弦田さんと遠野さんは、『クラコン』に出るらしいわよ。」
「今年の『マイコン』は予選・本選・全国大会、全部見に行くぞ。」
「全国大会は去年もそうだったけど、チケット入手が難しくなりそうよ。」
「おう、そう聞くと萌えてくるな。いや、燃えてくるな。『クラコン』も予選・本選・全国大会、全部見に行くぞ。」
「平日の場合もあるわよ。」
「会社は休むに決まっているだろう。システム部の林と、事業戦略部の青木は、『ピティナ旦那』。一方ヴァイオリンでは、『パパアッチ』はオレぐらいのものだ。あとは、『発表会、しょうがないから、行きますが』という低モチヴェーションのダメパパばかり。だからうちの会社はダメなんだ。」
「それ、関係ないと思うけど。」
「いや、関係ある。家族への貢献度≒会社への貢献度。」
「アッ、これだ! これやこの『あふさかの関国際音楽コンクール』のサイト、見て見て。」
「どれどれ。なるほど、関西ではセミ丸急上昇中と話題のコンクール。全国型になってきたな。よし、知るも知らぬも『あふさかの関国際音コン』インファント部門エントリー決定!」
「『天才弦掻くコンクール』というのもあるわよ。関西では『マイコン』の模擬テスト的位置づけ。」
「おお、浪花のド根性による真夏の戦い、か。それも見に行くぞ。」
「『がまん比べしょっちゅう乞う音楽コンクール』なんていうのもあるわよ。」
「遠方に出かけて、弾く機会が増えてくるわけだな。」
「となると、いかにも舞台で着ますよ的ドレスだけじゃなく、おうちから着ていってそのまま舞台に出ても不自然じゃないドレスも買わなきゃねえ。いっそ、弓元ピーコにお見立て願おうかしら。」
「コンクールのため宿泊もしなければならないだろう。」
「この際だから、旅行バッグを軽量のものに買い替えたいわ。」
「ビデオカメラもコンパクトな軽いやつが必要だろう。」
「私の服も欲しいわ。発表会用とは別に、コンクール用のが。」
「オレもそろそろ一張羅がよれてきた。ポール君に替わる、次世代型勝負スーツが欲しいぞ。ドルガバかアルマーニか。」
「私、ヴァイオリンケースが欲しい。『のだめ』の峰君が持っていたような、赤くてカワイイのがいい。」
「ぱくちゃん、とみか、ぷられーる、ほちい。くれーんしゃと、だんぷと、ぱとかーと、ちんかんちぇんと・・・」
・・・
「欲しい」「買いたい」「欲しい」「買いたい」・・・
家族全員で際限なく繰り広げられる、「購入物」論議。
欲望の連鎖反応、おねだりのドミノ現象。
【アホリズム】(22)
★コンクーラーへの道。やはり先陣を切るのは「福沢諭吉」であった。
- [2007/04/23 00:37]
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「歌えよ踊れ、分数ヴァイオリン」(21)−演目がさらにエスカレート
いよいよ発表会。
当日のプログラムを控え室で受け取る。
プログラムを見る。
またもや衝撃が走った。
「7.大木奏江(小1)」の横に白い紙が貼ってあり、曲名が修正されていたのだ。そこにはこう書いてあった。
「ラロ:スペイン交響曲 第1楽章」
眼が釘そのものになり、霞んできた。プログラムに2〜3滴、脂汗が落ちた。
「ラ、ラ、ラ、ラ、ラロ・・・」
ら、ら、られ、ろれつが回らない。一瞬、意識が遠のきそうになった。
「嘘だろ。」
「ありえない。まだ小1よ。」
重苦しさで、それ以上言葉が継げない。
プログラムの文字を全部飲み込んでしまいたくなった。
が、飲み込まれてしまったのは、外見一家を含む、控え室にいた門下生のほうだった。
大木奏江とその母は、門下生母子の視線の集中放火を浴びながら、控えめに控え室に現れた。
周囲に丁寧に頭を下げた後、母はケースから2分の1のヴァイオリンを取り出し、調弦を始める。
娘はその間、自分ひとりでテキパキとドレスに着替える。ドレスを着せるだけでも高ストレスの凡百の母娘とは大違い。「できる」おけいこニストはあらゆる点で効率的だ。
娘は一秒の時間も惜しむように、調弦の終った楽器を母から受け取ると、音を確かめようと軽く弦に弓をあてた。
ハッとするような音色が立ち昇る。
母親の腰までしかない背の小1の大木奏江は、ラロが自らの血の中のスペインへの強烈な憧憬の念に駆られて作曲したその曲を弾き始めた。
全身が表現の塊だった。
小さい体に溢れる自信は、幼さ故の恐いもの知らずからではなく、類い稀な早熟故の技巧的達成度から生じていた。2分の1から易々と紡ぎ出される、伸びやかで強烈な高音。
今まで控え室を占拠していた種々雑多なヴァイオリンの響きとはまったく異次元のものだった。
信じられない。誰もがそう思った。
それまでこの母と娘に打たれていた視線の釘がポロポロと落ち始めた。皆、伏し目がちになり、体の動きを止め、ただ一心に耳だけになって、そのスペイン交響曲に聞き入っていた。
控え室はすでに演奏会場と化した。
【アホリズム】(21)
★控え室で、皆で思わず控えてしまいました。ははーっ。
- [2007/03/28 00:34]
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「歌えよ踊れ、分数ヴァイオリン」(20)−驚天動地の発表会プログラム(2)
大木奏江 ヴァイオリン 予選 本選 [検索]
「あった!」
「大木奏江。」
「かなわないか音楽コンクール。」
「やっぱり。」
「受賞してるわ。」
「市助役賞。」
「すごい!」
「ここにもあった!」
「日本クラクラシカカル音楽コンクール」
「全国大会で入賞!」
「小1で?」
「信じられない。」
「曲は・・・」
「クライスラー:前奏曲とアレグロ!!」
「ゲロゲロ。」
「師事する先生の名前は・・・」
「アンナ・ツヴェターエヴァ・・・!?」
「外国人か?」
「アンタ・ツメタイッテヴァ。冷血なロシア人教師ね、きっと。」
「あな、恐ろしや!」
「ロシアまでレッスンに通ってるのかしら?」
「わからん。」
【アホリズム】(20)
★北方の驚異に備えよ!
注)本内容は完全にフィクションです。「大木奏江 ヴァイオリン 予選 本選」と実際にググっても何も出てきません。
- [2007/03/26 00:20]
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「歌えよ踊れ、分数ヴァイオリン」(19)−驚天動地の発表会プログラム
まもなく発表会。
外見整子は小1でザイツの協奏曲を弾く。なかなかのものだ、と両親は思っている。たぶん、門下で3人いる小1のトリを務めることになるだろう。
発表会の幹事役から送られてきたプログラムは、外見一家のささやかな優越感をくすぐるはずであった。
・・・
4.遠野響(小1) バッハ:ブーレ
5.弦田由美(小1) ドヴォルザーク:ユーモレスク
6.外見整子(小1) ザイツ:協奏曲 第2番 第3楽章
7.大木奏江(小1) ベリオ:バレエの情景
・・・
えっ?
7.大木奏江(小1) ベリオ:バレエの情景
目が釘付けになる。
「整子の後に、もうひとり小1が・・・」
「大木奏江・・・?」
「ベ、ベ、ベリオ。バ、バ、バレエの情景・・・」
「しょ、しょ、小1で・・・」
ジトーーーッ。(両親の額を伝う脂汗の音)
「ポジション移動、楽々ってこと? 小1で。」
「当たり前だろ。ヴィヴァルディどころじゃないぞ。ベリオだぞ。」
「マイコンの本選曲だものね。」
「小1で・・・何でそんなの弾けるんだ。」
「この子の名前、初めて見たわ。」
「前回までの発表会のパンフ、どこかにあったよな。」
「載ってないわよ。ないはずよ。こんな名前、見たことない。」
「最近入門したのか?」
「そうよ、きっと。」
「一体、どこの門下から?」
「わからない。」
「不覚だったな。」
【アホリズム】(19)
★「すげー差、格差。ちょっと痛めつけておやり。」「ご隠居、痛めつけられたのは、こちらのほうですぞ。」
外見整子は小1でザイツの協奏曲を弾く。なかなかのものだ、と両親は思っている。たぶん、門下で3人いる小1のトリを務めることになるだろう。
発表会の幹事役から送られてきたプログラムは、外見一家のささやかな優越感をくすぐるはずであった。
・・・
4.遠野響(小1) バッハ:ブーレ
5.弦田由美(小1) ドヴォルザーク:ユーモレスク
6.外見整子(小1) ザイツ:協奏曲 第2番 第3楽章
7.大木奏江(小1) ベリオ:バレエの情景
・・・
えっ?
7.大木奏江(小1) ベリオ:バレエの情景
目が釘付けになる。
「整子の後に、もうひとり小1が・・・」
「大木奏江・・・?」
「ベ、ベ、ベリオ。バ、バ、バレエの情景・・・」
「しょ、しょ、小1で・・・」
ジトーーーッ。(両親の額を伝う脂汗の音)
「ポジション移動、楽々ってこと? 小1で。」
「当たり前だろ。ヴィヴァルディどころじゃないぞ。ベリオだぞ。」
「マイコンの本選曲だものね。」
「小1で・・・何でそんなの弾けるんだ。」
「この子の名前、初めて見たわ。」
「前回までの発表会のパンフ、どこかにあったよな。」
「載ってないわよ。ないはずよ。こんな名前、見たことない。」
「最近入門したのか?」
「そうよ、きっと。」
「一体、どこの門下から?」
「わからない。」
「不覚だったな。」
【アホリズム】(19)
★「すげー差、格差。ちょっと痛めつけておやり。」「ご隠居、痛めつけられたのは、こちらのほうですぞ。」
- [2007/03/25 00:21]
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「歌えよ踊れ、分数ヴァイオリン」(18)−“発表会 親 服装”と思わずググってみたくなる
発表会が近づくと・・・
「ああ、衣装、どうしようかしら。」
「この時期になると、ドレスの通販サイトも在庫が少なくなるなあ。」
「ドレス店Aはだめよ。前回の発表会の時、弦野さんちが着せていたのは、Aの決算バーゲン品。」
「Aは結構、店の名前が知れ渡っていて、しかも値段が安め。みんな利用するんだな。」
「だから、見え見え。まともに着て出たら、それこそ弓元ピーコにこきおろされるわよ。」
「弓元ピーコ?」
「小4の弓元かすみちゃんのお母さん、弓元弘子さん。門下一のドレス評論家ママ。詳しいわよ。Aのすべてのアイテムが値段と共に完璧に頭脳にインプットされているそうだわ。」
「そうか。毒舌口撃は避けたいところだな。ちょっと高いけど、最近見つけたBであたるか。」
「ああ、それから靴はどうしようかしら。足が大きくなったから、前回のはもう履けないし。」
「ドレスだけでなく、靴でも差をつけないとな。弓元ピーコもそういう点を厳しく見ているだろう。やっぱりシルバーの靴か。」
「あっ。ひとつ上のサイズならあるんだけど。このサイト・・・。本当に在庫ないのかしら。」
「ネットじゃわからないからな。明日、電話で聞いてみよう。」
「それから、ビデオカメラ。」
「ハイビジョン対応のものがいいだろう。この際、買い替えるか。」
「そうね。」
「それから、ビデオの三脚。しっかりしたプロ仕様のものを買おう。」
「そう言えば、私。発表会に着て行く服がないわ。」
「おい、やっぱり父親はネクタイ締めて、ジャケット着て行くほうがいいのかな。音羽さんのご主人は結構決めてくるからな。」
「箔太郎はどうしようかしら。また今度もおばあちゃんちに預ける?」
「いや、連れていこう。」
「そろそろ箔太郎のおけいこもスタートしなければならないし。一度発表会を見せておく必要があるわね。」
「ヴァイオリンも買わなければならない。」
【アホリズム】(18)
★ようこそ。魔界の森の「底なし沼」へ。
- [2007/03/13 00:07]
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